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院長の月刊コラム(2021年1月)2021年の命運はワクチンにかかっている

 遂に香川でもクラスターが発生し、第三波として新型コロナの脅威が身近に迫ってきました。日本だけでなく世界を見渡しても、社会生活への負荷が限界に近づいています。先の見えないドロ沼に、皆さんもウンザリしている事でしょう。そんな中、ようやく希望の光が見えてきました。既に海外では接種が始まっている、新型コロナワクチンです。まだまだ道のりは遠く途中に山も谷もありそうですが、まさしくゲームチェンジャー(現状を根底から覆す新たな要因)の期待を抱かせる切り札です。2021年がどんな年になるのかは、ワクチンの接種率有効性副反応3つにかかっています。

 今のところ最も確からしいのは、有効性です。最近は変異株が話題になっていますが、そもそもコロナウィルスは常に変異しています。20204月の時点ですら、約5000種の変異株が確認されていました。新型コロナウィルスの性質は世界中で微妙に違っているはずですし、いまこの瞬間にも刻々と変異しています。それら全ての変異株に対しても、おそらくワクチンの有効性に問題はないだろうと考えられています。インフルエンザウィルスと違って、コロナウィルスは表面の蛋白質が大きく変わるほどの変異は起こりにくいからです。

 今回のワクチン開発は、異例の速さで成し遂げられました。それはm(メッセンジャー)RNAワクチンという、最新技術のおかげです。これまでインフルエンザなどでは、実際にウィルスを卵の中で培養して増やしたのちに、壊してウィルスの一部分にしてからワクチンとして注射するという方法をとっていました。これには、時間がかかります。今回のmRNAワクチンは、そうしたウィルスの部品を人間の体内で作ってしまうものです。新型コロナウィルスの遺伝子配列は既に解読され、ウィルス表面の蛋白質を作るmRNAも解っています。mRNAは、試験管の中で簡単に合成できます。mRNAを細胞内に注入すれば、望み通りの蛋白質が作られ細胞外に放出されます。元々人間の体内には無い蛋白質なので、免疫細胞が反応して抗体が作られるという筋書きです。

 DNAmRNAに写しとられ蛋白質が作られるという一連のシステムは、もう50年以上前から判っていました。それがワクチンに応用されなかったのは、mRNAが極めて壊れやすいからです。DNAの結合をアロンアルファの接着とすれば、mRNAはポストイットのようなものです。そんな脆い分子を細胞内に入れるには、相当手の込んだ細工が必要なのは間違いありません。巨大製薬メーカーの、企業秘密がテンコ盛りなのでしょう。そしてそこからは、様々な反応の生まれる可能性があります。

 ワクチンに対する最大の懸念は、副反応(ワクチン接種に伴う免疫付与以外の好ましくない反応)です。人間に対するmRNAワクチンの使用経験はゼロに等しいですから、正直何が起こるかは判りません。接種後すぐに現れるアレルギー反応はまだ判りやすいのですが、長い時間たってから現れたり徐々に現れたりする可能性も否定できません。全ての副反応を見極めようとするなら、少なくとも数年はかかるでしょう。副反応の起きるメカニズムが解らないので、予防も無理と思われます。

 ある集団にワクチンを接種してウィルス感染を終息させるには、6070%7090%という説もあります)の接種率が必要とされています。ワクチンで抗体が出来ていれば、感染しても速やかにウィルスは死滅します。つまり、無症候感染者がいなくなるのです。今回の新型コロナウィルスがこれだけの世界的な大流行に至ったのは、無症候感染者がウィルスを撒き散らしたからです。これを止めるには、ロックダウンを延々と続ける以外ではワクチンしか考えられません。

 2月には、接種が始まりそうな勢いです。政府は経済的混乱を一刻も早く収拾したいでしょうから、接種に前のめりというのも頷けます。ワクチン接種は、義務ではありません。ワクチンのメリットとデメリットを理解して覚悟の上で接種に踏み切るか、嵐が去るまで身を潜め続けるか、決めるのは私たち一人一人に委ねられています。

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