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院長の月刊コラム(7月)糖尿病・生活習慣病の食事

 幸いなことに香川ではまだ、新型コロナウィルスは鳴りを潜めてくれています。その隙に、今月の月刊コラムでは生活習慣の中で最も重要な食事について取り上げる事にしました。

〜糖尿病食は万能の健康食〜

  何度も言いますが、生活習慣病は(図1)のような氷山に例えられます。検査の数値として見えるのは、水面の上だけです。そして糖尿病は、氷山の中央部分にあります。食事で糖尿病を改善できれば、血圧もコレステロールも尿酸値も脂肪肝も肥満も一緒に改善できます。ただ糖尿病の山の高さ、つまり糖尿病が未発症か軽度か重症かは、インスリンを作る能力に左右されます。あの体重300kgを超えていた頃の小錦でさえ、インスリンを作る力がケタ外れに強いため糖尿病ではありませんでした。しかし糖尿病ではなくても、どう見ても健康体ではありません。最も重要なのは、水面下で見えない氷の大きさだからです。多くのインスリンを必要とする不健康な体では、血糖と関係なく動脈硬化が進んでいくし、腎臓や心臓の機能も低下します。糖尿病を改善できるような食事をすれば、氷山全体が小さくなっていくのです。

図1.pdf

〜これまでの糖尿病食〜

 これまでの糖尿病食は、「食品交換表」が基本でした。簡単に説明すると、食品を6つのグループに分け各々のグループ内で交換しながら摂取量を決めるという方法です。例えば蛋白質のグループを1食あたり160kcal摂取する場合、「牛モモ肉80g」「ササミ160g」「サバ切身80g」「絹ごし豆腐1丁」等々の中から食事の度に交換できます。この方法を学ぶと食品をザックリ6つに分けてイメージする事ができ、血糖変動に重要な炭水化物については高い精度で推定が可能です。

 しかしこの方法は、全ての食事を自分で計量して調理する事が前提です。今日の生活では、まず無理になってきました。これに代わるゴールデンスタンダードは、まだ存在していません。そのため、糖質制限を含め様々な説がマスコミを通じて飛び交っているのが現状です。

〜糖質(炭水化物)制限食の限界〜

 食事療法は、半年ほど頑張ってそれで終了、というモノではありません。5年も10年も20年も、続ける必要があります。ご飯やウドンや菓子類や果物を、ずっと我慢し続けられる人はそう多くないでしょう。そうして挫折して自分は精神力が弱いと自分にレッテルを貼ってしまうのは、あまり賢いやり方とは思えません。それに、糖質の全てが悪いワケではありません。江戸時代に国民の大半を占めた農民たちは、魚も肉もない穀物(複雑糖質)主体の食生活でしたが糖尿病など皆無でした。いずれ詳しく述べますが、問題なのは①摂取エネルギーの過剰②砂糖(単純糖質)の増加③野菜(食物繊維)の不足、この3点です。

〜食事の優先順位〜

 食品交換表が持つもう一つの欠点は、今までの食生活を一切無視して理想を押し付けてしまう点です。これだけ食生活が多様化して気ままになった現在では、優先順位を考えながら一つ一つ改善するしかありません。では日本人の食生活で、何が最も問題なのでしょうか。私たちは、「間食」と「夕食のドカ食い」の二つだと考えています。

 まず間食です。日本人は、小錦より遥かに痩せていても糖尿病になります。それは、インスリンを出す力が元々弱い上に、衰えるのも早いからです。インスリンを出す膵臓のβ細胞は、働かされる度に弱っていきます。私たちがお勧めする食事療法の最初の一歩は、『間食は一切ナシ』です。ただし、菓子類や果物を一生食べるなというのではありません。消化を遅らせる食物繊維を充分に摂っておけば、後から砂糖や果糖(単純糖質)が入っても吸収は緩やかになります。女性と高齢者で糖尿病が悪化したとき、真っ先に疑うのは間食です。特に香川で危険なのは、コタツ+テレビ+ミカンの組み合わせです。

 次に夕食ですが、働く男性の多くがここに問題を抱えています。食べる時間が遅くなるほど、空腹のためガッツリと食べてしまいます。食べたエネルギーを消費しないうちに寝るので、血糖も脂質も長々と高止まりして肥満も進みます。ましてアルコールを飲みながら食べると、満腹は麻痺するしツマミは脂と塩に偏るしで最悪です。対策は難しいのですが、マズイかなと思う気持ちさえあれば何か捻り出せるはずです。ぜひ一緒に考えましょう。

 この段落のまとめです。食事の中で影響の大きい順に挙げると、間食≒夕食≫朝食>昼食です。昼食のウドンは、決して糖尿病の主役ではないはずです。

 

〜私たちが考える食事療法〜

 食品交換表を使って1日の摂取エネルギー量を計算する方法は、もはや現実的ではありません。そんな事をしなくても、よほど糖尿病が悪化しない限り、体重測定で代用できます。エネルギーが過剰なら体重は増えるし、逆なら減ります。その代わり、食事の影響を最も受けない朝食前に測定する必要があります。朝は、洗面や髭剃りなどを考える事なく一連の流れで行動するはずです。その中に、体重測定を組み込んで習慣にしてください。前の日に測ったのでは、一晩寝たら忘れてしまいます。朝に測って増えていたら、前日の食生活を反省して一日頑張ってみて下さい。そうすれば、元に戻れるはずです。体重測定は、結果の確認です。「減らさないと...」と思いながら測ると、疲れて止めたくなります。増えていない事を確認しながら徐々に習慣を修正すれば、勝手に減っていきます。そして食事のバランスを示したのが、下のフードピラミッドです。食品の分類は4つで、量も大まかなイメージで充分です。

フードピラミッド.pdf

 最も大切なのが野菜です。火を通しカサを小さくして、可能な限り多く摂ってください。煮ても炒めても結構です。炒め物に使う油は、揚げ物のコロモが吸った油よりはるかに少量です。野菜は蛋白質を混ぜて料理して、美味しく食べて下さい。海藻とキノコは野菜に含まれ、全てのイモ類は炭水化物の方に含まれます。炭水化物は、悪者ではありません。米を炊く時には米より多くの水を入れますから、炭水化物は半分以上が水のふやけたエネルギーの低い食品です。ただし、炭水化物単独では食後高血糖の原因になります。炭水化物を上回るボリュームで、食物繊維を摂る事が重要です。努力と工夫は要りますが、頑張った甲斐は必ずあります。

 蛋白質は、炭水化物の半量ほどが目安です。蛋白質には、必ず脂肪が含まれているからです。魚でも肉でも、大差はないと考えてください。脂肪の質が多少違うけれど、摂りすぎがエネルギー過剰につながる点は魚も肉も同じです。一番上にあるのは、少ない程よい食品です。でもゼロにする必要はありません。火を通した野菜をシッカリ食べたご褒美に、その3分の1量を目安に果物でも菓子類でも楽しんで下さい。食べてはいけない食品など、一切ありません。これが、私たちの考える理想の食事です。

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