お知らせ・ブログ

院長の月刊コラム(8月)糖質制限食を考える 〜その1〜

 先月は食事療法の話をしたのですが、その中で触れた糖質制限食についてもっと詳しく知りたいという声を複数の方からいただきました。確かに一時ほどではなくなったものの、体重減少を目指す食事療法として真っ先に浮かぶ存在ではあります。

 このコラムは、字数など細かいことを気にせず書き進められるのが良いところだと思っています。これから数回の予定で、糖質制限食に関して私の思うところを余すことなく述べてみたいと思います。各章ごとに見出しを付けますから、興味が無ければ読み飛ばしていただいて結構です。まずは基本的な、炭水化物とは何か?という話から始めます。

〜炭水化物と糖質〜

 炭水化物とは、文字通り「炭素(C)」と「水(H2O)」の化合物です。基本単位になるのは炭素と水が6個ずつのC6H12O6で、多くは環状の構造をしています。ただ同じC6H12O6でも、微妙な構造の違いによって60種類以上が存在し、ヒトにとってエネルギー源になるもの、利用されず体内を素通りして排泄されるもの、そして有害な作用を持つものもあります。このように多様なC6H12O6が、様々な組み合わせで延々と数珠つなぎになっていくのですが、その結合の仕方によっても性質が変わってきます。

 こうした基本単位の種類・結合数・結合様式によって、炭水化物はザックリと3つに分類できます。単純糖質と複合糖質と食物繊維です。

 単純糖質は糖類とも言われ、基本単位であるC6H12O6が1個または2個で出来ています。1個の代表がブドウ糖と果糖、2個はほとんどが砂糖(厳密にはショ糖:ブドウ糖と果糖が1個ずつ結合)で、いずれも口に入れると「甘い」のが特徴です。炭水化物といわれて一般的に思い浮かべる米飯やパンやウドンなどは、複合糖質ないし多糖類と呼ばれます。基本単位は主にブドウ糖で、比較的切られやすい結合で、数十個から数万個が数珠つなぎに連なっています。食べると「もちもち」するのが重要で、長く噛んでいると結合が切れてブドウ糖に近づくのでジンワリと甘みが出てきます。

 そして、C6H12O6の中でも特定の種類が特別に切れにくく結合しているのが、野菜などに含まれる食物繊維です。水溶性と不溶性があって、水溶性は「ネバネバ」で不溶性は「モシャモシャ」とした食感が代表的です。炭水化物の中では、食物繊維だけが明らかに違う性質を持っています。炭水化物から食物繊維を除いた残り、つまり単純糖質と複合糖質を合わせて糖質と呼びます。

〜単純糖質その⑴;果糖〜

 まず単純糖質について話を進めます。繰り返しますが単純糖質にはC6H12O6が1つのもの(単糖類)と2つ結合したもの(二糖類)があり、単糖類の代表はブドウ糖と果糖、二糖類のほとんどはブドウ糖と果糖が結合した砂糖です。ところで、果糖と聞いて、どんなイメージが浮かびますか?果物に多く含まれているためにその名がついたことからも、悪玉と思う人は少ないでしょう。むしろ最近は低インスリンダイエットが流行ったおかげで、インスリンを出さない善玉と思っている人もいるようです。でも実は、人間にとって毒になりうる危険な物質なのです。

 単糖類はC(炭素)が縦に6個ならぶので、両端が引き合って環状構造をとります。ブドウ糖と果糖は、[]のようにCHOの並び方が違うため、ブドウ糖は5個のCと1個のOで環状になる六員環になり、果糖は1個少ない4個のCと1個のOが環状になって五員環になります。この五員環は構造的に無理があるためか環状を維持できず、すぐ直線状に戻ってしまいます。直線状に伸びた単糖類は、グリケーション(糖化)といってベタベタと付着しやすい性質を持っています。グリケーションとは、鍋に入れた砂糖水をかき混ぜながら火にかけると茶色のカラメルができる現象です。体の中で褐色のネバネバした糖分が細胞の表面や血液中のタンパク質にこびり付くかと思うと、好いイメージは持てないでしょう。事実グリケーションは、細胞老化や動脈硬化を早める好ましくない化学反応と考えられています。こうしたグリケーションが、果糖はブドウ糖より10倍あまり速く進むといわれています。血糖を上げない甘味料として売り出しているプシコースなどの希少糖でも、似た性質を持つものがあるようです。

 すると、果糖は「悪」なのか、果糖の供給源である砂糖を摂ると体に毒ではないのか、という結論に短絡されがちですが、そこもまた話が違います。少なくとも人間は果糖を危険な物質と充分に認識しているらしく、腸から吸収された果糖は門脈から肝臓に流れ込むと即座に代謝されて無害な他の糖質や脂肪酸に作りかえられます。事実、どんなに大量の果糖を口から摂取しても、肝臓で完全に処理されるので、人の末梢血中では全く検出されないそうです。ただ、果糖についてはまだまだ判っていない事が多くあります。

 疫学(病気や異常値の原因を探るため集団の生活様式などを調査する研究方法)では、砂糖の摂取量と肥満や脂肪肝の増加に相関が認められています。その対策としてWHO(世界保健機関)の呼びかけで砂糖税の導入が進められ、肥満者の増加に悩む英国など20カ国以上で実現しています。少々長くなってしまったので、詳しくは砂糖の章で述べることにして今回はこれくらいにしておきます。来月は、ブドウ糖の話をします。

[図][図].png

BACK INDEX