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院長の月刊コラム(2021年2月)動き始めた新型コロナワクチン接種

 人類の歴史で最大規模のワクチン接種は、既に世界各国で試行錯誤しながら進められています。ヤンキースタジアム前に出来た長蛇の列を、一抹の不安と共に見られた方も多いでしょう。そうした様々な先行例を参考にしながら、日本でも「とりあえず、こんな形で...」とワクチン接種が動き始めています。ただ不確定な要素があまりに多く、まだまだ憶測の域を出ない話ばかりです。2月23日の時点で判っている限りを整理してみます。

 接種が医療関係者に対して始まっているのは、皆さんご存知のとおりです。先行接種4万人に続き、3月に入ると約470万人を対象に本格的な接種を進める計画です。ただ、する側もされる側も慣れていますから、大きな混乱は無くて当然です。バイアルの取り扱いやアレルギー反応に気をつかうくらいで、さしたる問題もなく対処できるはずです。それよりも最大のヤマ場になると予想されるのは、次にやってくる高齢者に対する接種です。対象者数も医療者の10倍ほどが想定されていますし、各個人への対応も格段に難しくなります。その実施にあたり基本方針と位置付けられているのが、東京都練馬区が公表した『練馬区モデル』です(下図:2/1配信 Yahooニュース から引用)。

(図)2:1.配信 Yahooニュースから引用.jpg

「早くて近くて安心」というコンセプトのもと、近くの診療所で受ける個別接種を中心に据えようとしています。確かに、理にかなった方法ではあります。高齢者にワクチン接種を行う場合、以下の三点が特に重要と想定されるからです。

 一つ目は予約の問題です。アメリカのように多くの人が大きな会場に集まる集団接種を行うと、手作業で予約をとっていては時間がかかるしミスも出ます。でもメールやLINEでは、使えない高齢者が続出するでしょう。近くの診療所なら、直接出向いて予約することも可能です。

 二つ目は接種現場での混乱です。集団接種の模擬演習で一番の律速段階になったのは、問診でした。ワクチンの意義が正しく浸透しているとは思えない現状で、不安を抱えたままで接種会場に行き、初対面の医療者にマニュアル通りの応対をされては益々不安が募るでしょう。最悪、こんな光景になるかもしれません。

  不安を抱える人:「アレルギーを持っているし、副反応が心配で...」

  初対面の医療者:「注射後15分は観察時間をとります。治療薬も準備しています。」

  不安を抱える人:「すぐに表れる以外にも副反応は色々あるでしょう?」

  初対面の医療者:「現在まで分かっている副反応と出現頻度をご覧ください。」

  不安を抱える人:「私にとっては起きるか起きないかで、不安の解消になりませんが...」

  初対面の医療者:「接種は義務ではありませんから、心配なら見合わせて結構です。」

  不安を抱える人:「コロナ感染は怖いから、接種しないとは言っていないけれど...」

  初対面の医療者:「それなら接種を受けてください。」

  不安を抱える人:「心配だから、相談しているんですが...」

  初対面の医療者:「提供できる情報は、これだけです。決めるのは、ご自身です。」

  不安を抱える人:「決められないから、困って聞いているんです!」

  初対面の医療者:「私にも決められませんが...」

時間通りに進まなければ、密にもなるしイライラは更なる不安の原因にもなります。最悪、貴重なワクチンが廃棄されるという事態にもなりかねません。馴染みの診療所で顔見知りの医療者が対応することで、少しは混乱も緩和されるでしょう。

 三つ目は経過観察の問題です。接種当日のアレルギー反応はもちろんのこと、その後に生じるかもしれない副反応は漏れなく把握する必要があります。マイナンバーカードなどのデジタルで管理する事が難しい以上、残念ですが旧態依然たる紙ベースに頼るしかありません。それも診療所に任せようという狙いのようです。

 ファイザー社製ワクチンはバイアル195本入りのボックスごとマイナス70度の保管が必要で、小分けできないという話でした。1バイアル6回分として1000回分以上になり、それを5日以内で使い切ることは診療所では無理と思っていました。それが練馬区モデル公表と共に、小分け可能に変わりました。診療所を接種場所にしたいという、強い意向が伺われます。しかし実際どこのクリニックが接種場所になるのか(全てではないと思われます)、予約はいつどうやって始めるのか、もしワクチンが余ったらどうするのか(キャンセル待ちの列を日本でも作るのでしょうか?)など具体的な話は何一つ伝わって来ていません。接種の日程を考えると、物事が進み出したら一気にバタバタ走り出さねばならないと思われます。最低限として今のうちに、接種を受けるのか受けないのか、受けるとしたら何処で受けるか、は決めておく必要があるでしょう。

 肝心のワクチン供給すら、まだまだ不透明なのが現実です。高齢者への接種が円滑に進まない限り、それ以外の国民への接種は予定の立てようもありません。ワクチン接種は、『終わりの始まり』と期待されてきました。しかし『終わりの終わり』が本当に来るまでには、まだまだ紆余曲折がありそうです。

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