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院長の月間コラム(2021年8月)「崩れ始めた終息へのシナリオ」

COVID-19のような新規の感染症を終息させるには、ワクチンか特効薬しかありません。どちらも開発には時間がかかります。それで、自粛と緩和を繰り返しながら粘り強く時間稼ぎをしてきたわけです。当初からワクチンの方が早いのではないかと囁かれてはいましたが、突然mRNAワクチンという夢のような新兵器が予想を遥かに上回る速さで実用化されて、これで一気に終息が見えるかと思われました。過去の例から、国民の70%がワクチンを接種すれば集団免疫で感染症は終息すると予想されたからです。しかし残念ながら、そのシナリオが怪しくなってきています。

終息のシナリオを崩す第一の要因は、変異株です。感染爆発を繰り返している間に、世界規模で感染力の強まる変異が進んでしまいました。【NHK新型コロナ特設サイト】や【ジョンズ・ホプキンス大学COVID-19ダッシュボード】によると、2回のワクチン接種を終了した人が国民の70%前後に達した西欧諸国でも感染の再拡大が続いています。いずれ集団免疫が成立するから未接種者でも守られる、という甘い考えは見直しを迫られています。

集団免疫が成り立たないとすれば、何が起こるのでしょうか。ザックリと計算してみます。仮にワクチン接種率が日本国民の80%に達したとしても、残る20%の2000万人以上には感染の危険性があります。2000万人の未感染者がいれば、一日の感染者数が2万人という今の危機的なペースでも感染が1000日続く計算になります。その間に新たな変異株は生まれ続けるので、重症化率が高まるかもしれないし小児にも感染が広まるかもしれません。たとえワクチン接種を済ませていても、事故や手術で免疫力の低下した人は感染して重症化するかもしれません。

我々医療者は、既にほとんどがワクチン接種を済ませました。しかし「このワクチンは絶対に安全だ」などと思って接種を受けた人は、一人もいないと思います。職域接種から一週間すぎた頃、接種部位より下に赤く痒みを伴う皮疹(モデルナアーム)を度々見るようになりました。-20℃保存を可能にした、企業秘密の氷山の一角を見る思いです。2回接種しても、何故か抗体が充分に出来ない人がいる事も知っています。今の医学では解明できない部分です。しかし住民の集団として見れば、効果は明らかです。下のグラフ(東京都福祉保健局HPから)を見てください。年齢別の詳しい統計は東京都くらいしか公表していないのですが、感染者の中で65歳以上の占める割合はワクチン接種と時を同じくして着実に低下してきています。

異物混入や接種ミスなど残念な話題には事欠きませんが、全体として見れば現時点でmRNAワクチンの安全性と有効性は明らかです。もし接種に迷っているのなら、是非よく考えてください。迷っている原因は一過性と判っている発熱や痛みなのでしょうか、因果関係の不明な症例の報道なのでしょうか、それともデマ情報に踊らされているだけなのでしょうか。

ワクチンパスポートは経済効果を生むだけでなく、一時的な接種率上昇にも貢献するかもしれません。しかしワクチン接種を済ませても、軽症で早く治癒するだけです。一過性に感染して、ウィルス拡散の一翼を担う危険性は消えません。その点を無視して安全のお墨付きを与えるのは、政策として間違っています。導入すべきではありません。3回目のワクチン接種も、まだ考慮すべきではありません。世界中には、医療者にすら接種が完了していない国が残されています。WHOの発表では、ワクチン使用の75%が日本や欧米など10の国に集中しているそうです。

ついに日本でも、ロックダウンの必要性が議論され始めました。しかしこれも、時間稼ぎでしかありません。一時的に感染者数を抑え込むことは必要ではあるけれど、その間にワクチン接種が進むのでなければ更なる忍耐も無駄になります。日本国民全員が感染するかワクチン接種を終えない限り終息はない、とまで覚悟すべき時が来ているのかもしれません。終息のシナリオを崩す最大の要因、それはワクチン接種率の伸び悩みです。

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